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 わたしを見失った怪物は勢い余って家の壁にぶつかる。体勢を立て直してあたりをきょろきょろみまわしてる。そしてわたしを見つけるとわたしを見つめたままゆっくり立ち上がる。立ち上がるとさっきの身長の倍ぐらいの高さになった。
 ネコの顔をしたその男の子はわたしをやさしくおろすと腰にぶら下げてる小剣を引き抜いて怪物のほうを見下ろす。
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ひゅ
とつぜんあたりにおおきな影が走る。タガメだ。タガメが入り組んだ建物をすいすいとくぐり抜けて怪物めがけて飛んでくる。
タガメが怪物のまえに降り立つなり「シャアアアアァァッッ」といかくする。怪物もふらふらとアンバランスなあたまを支えながら「あああああああっ」とさけぶ。その叫びがまわりのものをビリビリ振動させる。

お父さんはわたしたちをみて「いいかい、この部屋には絶対入っちゃだめだからね」という

コリスのおばあちゃんは「わたしゃはめがもうあんまりみえんもんですから」とわたしのこえをみながらてにもっているぬいものをする

ぼくは彼女のむねからお腹のあたりをゆびさきでかるくなでる

野菜の切り方について

短い詩のなかでひとはどれだけの想いを残せるだろうか

ベルベットのカーテンの中わたし自身もやのかかる黒に
 怪物は大きくとび上がってタガメに乗りかかろうとするけどタガメは怪物のうでをつかまえてそのまま勢いにのって怪物を投げ飛ばす。怪物は思いっきりかべにたたきつけられよろけたところをネコの顔した男の子がここから飛び降りて怪物の目に小剣を突き刺す。
「きゃあああああああっ」
怪物が大泣きしてじめんのなかをもぐってく。
「ふう」
ネコの顔をした男の子は小剣をサヤに納めると
「おおーい、だいじょーぶ?」声をかけそれからわたしのところまで跳んできてわたしを抱きかかえてここから飛び降りる。
「わっ」
わたしの体はまた宙に浮いて軽い身のこなしで地面に降り立つ。タガメがフゴッと首を振る。
「ありがとう」
「あれは去年のユゴーだったんだけどね、・・ぼくはペペっていんだ。きみは?」
「なつこ。」
「 ・・きみはここのヒトとはちがうね。そうだろ」
怪物が去って、ヒトビトが戻ってきた。みんな壊れた出店を片付けたり傾いた神輿を元に戻し始めてる。
「おいで」
ぺぺは一回あたりを見回すとわたしとタガメの目を見てそれから一言言ってヒトの流れとは逆のほうを歩いていった。
 だいぶ人気がなくなってきたところまでくるとぺぺはふいに路地裏に入った。わたしたちもあわててペペの後を追って路地裏に入る。そこにはもうペペの姿はなく、わたしはそのまま進む。
 路地裏を囲む建物は高く、日の光はまったくといいほどあたらない。うえを見上げると空がまぶしく細い川のように見える。わたしと川の間に電線が張りめぐらされていてそれが光を途切れさせる。
 工場から出る泥で川が流れ、街全体は泥一色。その工場から出た泥で作られた街の特産物は毒々しい紫色をした芋だ。俺はその泥の色も芋の紫も大嫌いだ。毎日泥色の街の景色を眺め、三食ともあの毒々しい色のした料理が出されるのはもううんざりだった。見ただけで吐き気がしてくる。どうしてみんなそんなに平気で食えるんだ?フユキなんかこの前ドロドロの紫シチューを三杯もおかわりしてたぞ。あんなの食べるやつの気が知れねえ。
 工場は飽きもせずに廃液管から川に泥を吐き続けどろどろと滞った流れが街を泥色に染めていく。乾いても泥は塵になって空気を汚す。俺はそんな汚れた空気を吸うと思うだけで胸がムカムカしてくる。一生この中で生きていくのかと考えるだけで気が狂いそうだ。絶対ここを出てやる。
 そんなフラストレーションの中、救いなのが最近できたテイクアウト専門ファーストフード店“陳珍堂”名前はともかくあそこには俺の大嫌いな紫色と泥が全然ない。そして何よりも香ばしい匂いとてかてかと輝く色鮮やかな料理たちが俺のストレスを忘れさせてくれる。
 俺は学校が終わると一目散に陳珍堂に行っては小遣いに限りがあるまでありとあらゆる食い物を買いあさっては唯一泥を見ないですむ部屋の奥の押し入れに閉じこもってむさぼるように食いまくった。


 今日は何を食べようかな、鶏肉の南蛮揚げもいいないやたまにはあっさり八宝菜もいいな、そういえば来週豚の角煮が新発売されるらしいなああはよ出んかな。朝っぱらから陳珍堂の料理のことで頭がいっぱいで学校の授業なんてどうでもよかった。それにしても先生おせーな。授業長引くじゃねーか。クラスの奴らも先生が来ないもんだからぺちゃくちゃしゃべりだしてる。
 ガラガラ、先生があわてた様子で教室に入ってくるなり「お前ら静かにしろっ、えーっ一時間目は自習にするっ!」クラスのみんなはキャーとかガッツポーズとってるとまた先生が「しーずーかーにっ!」怒鳴る。うるせー。二組の先生も入ってきて先生とひそひそ話すると「それじゃ先生は行くから静かに自習しとくんだぞっ!」っていって教室をあとにする。当然クラスの奴らはわいわい騒ぎだすうるせー。
 学校が終わるといつものように陳珍堂に駆けていく。おれは鶏肉の南蛮揚げと八宝菜を買い込んでホクホク顔でうちを目指す。途中うちのクラスの女子グループがとろとろ帰ってなんか話してる。
「ねえヤスダさん病気しとるらしいよ。それもへんな」
「えっ、そうなん?最近来とらんけどそうなん?」
「えっ病気って、なん?」
「さっき先生の話耳にしたんだけどさー。なんかへんな病気らしいわよ。全身がパテ芋の色になって泥色の水玉模様が体中にできちゃってさー。大笑いするらしいよー」
「なにそれウケるんだけど、てかありえなくない?」
「いや笑えんでしょ、わたしそんな病気なりとないわ」
 くだらねー
とっととうち帰って八宝菜食お


 俺は高校卒業して東京の大学に進学した。これであの紫と泥のついた街とはおさらばという訳だ。ところがだ、大学にも一人暮らしにも慣れてきてひと月が経ったころ、テレビのニュースとかで最近都市の泥化が進んでいるという報道をよく聞く。原因は例の工場の景気がよく成長を今も続け、未だに泥は吐き続けていることらしい。それに伴いあの毒々しい芋が各地で特産物として栽培されているそうだ。
 なんなんだあの紫と泥は、どこまでも俺をつけてくるのか。そう思うとあの頃のイライラを思い出し、あの時以上に激しい怒りがこみ上げてきた。
 ニュースで報道していたわりには都市の泥化は急速ではなくまだ東京にまで来ていなかった。相変わらずニュースでは泥化についての報道が頻繁にされていたが、大学を卒業するまで特に大きな変化はなかった。しかし泥は確実に俺のところに近づいてきていた。
 会社に就職してそれなりに忙しい日々を送っていると、俺はあの紫と泥のことに気にかけなくなった。ニュースの報道も耳にタコができるほど聞いてきたから気にもしなかったし街は全くと言っていいほど汚れていなかった。しかし東京にも気づかれないようにじわじわと泥化は進んでいた。それは例えば、いくら太陽を見ていてもそれが動いている様子を見ることはできない。しかし実際では肉眼では確認できないほど、それはゆっくり動いている。この泥化はそんなものだった。その肉眼では確認できない泥化に気づいたときには街は、もう












 東京はもう泥一色になっていた。
 俺は次第に会社を休むようになり部屋に引きこもっていった。どこに行っても泥色なのだ。俺のストレスは頂点に達していった。俺は食料を買溜めて極力外に出ないようにした。もちろんカーテンを閉め切って泥との接触を一切避けた。しかしこんな生活いつまでも続く筈がない。貯金もそんなにある訳じゃない。どうしたらあの忌々しい泥を追いやることができるのだろう。どうしたらあの泥を見ないで暮らしていけるんだ?日々そのことしか考えられなかった。
 しかし、いくら考えても答えは見つからない。一つ除いて。


思い立ったある日の晩、俺はうとうとと浅い眠りから醒めると顔を洗うために洗面所に立った。そして鏡で自分の顔を見たとき、俺は全身の血の気が引いた。真紫なのだ、全身、あの毒々しい紫色の芋と同じ色をしている。俺はもう立つ力を失ってその場にへたり込んで壁にもたれかける。ろくに息ができない。両手をかざしてみると、両手も見事に紫色をしている。あああ、ふいに学校の帰り道クラスの女子が話してたことを思い出す。

「ヤスダさん病気らしいよ」
「そうなん?最近来とらんけどそうなん?」
「えっ病気なん?」
「さっき先生の話耳にしたんだけどさー。なんかへんな病気らしいわよ。全身がパテ芋の色になって泥色の水玉模様が体中にできちゃってさー。大笑いするらしいよー」

全身がパテ芋の色になって泥色の水玉模様が体中にできちゃってさー

全身が紫色と泥の水玉模様になったヤスダを想像した。
 どうして俺なんだ 手のひらにプクプクッと泥色の水玉模様がひとつふたつできていく。そして体中に広がっていく。ああっ、おれはびびってうでを見回した。次々水玉模様が浮き上がる。うわっ うわっ うあああああ 俺は水玉模様を取り除こうとしてうでを掻きむしる。服も脱いで体も掻きむしる。そんなことをしても無駄なのは頭では分かってたと思う。けどとにかくここから逃げ出したかった。ずいぶん乱暴に動き回ったせいで、俺は部屋のあちらこちらにぶつかる。棚からものが落ちたりなにかが壊れた気がする。そして足がもつれて盛大にこけた。
 はぁ はぁ 浅くなっていく呼吸の中、俺は手のひらの泥の色をした水玉模様を眺めた。死ぬまで俺はこの、この紫と泥からは逃げられないのか。
もう全身に力は入らないのに口から声が漏れる。それから肺が痙攣し始める。



 は、は ははは はは  は あははははははははははっは はっはははははははははははははははあはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっははははははははははあっ
 路地を抜けるとわたしたちはひらけたところに出た。その中央にはいくつもの建物がまるで粗大ゴミが捨てられているように積み重ねられ、おおきな山を作っていた。その山のふもとにペペが立っている。
「こっちだよ」
ぺぺは建物に取り付けてある長いはしごを上っていく。わたしもペペについて上ろうとするとタガメもついていこうとするのペペが制止する。タガメはまたもさびしげにわたしを見る。
家、プレハブ、ビル、マンション、コンビニ、納屋、鉄塔、神社。いろんなものが天地かまわず積み重ねられそのすきまに器用にはしごや橋が架けてありわたしたちそれらを使ってこの山を登っていく。
 登り終えるとこじんまりしたバルコニーと小屋がある。何か秘密基地みたい。
小屋にはドアはなく、大きな窓から光がさしこんで中の様子がよく見える。本棚が壁のほとんどを占め、見たことない書体が記された本がぎっしり並んでる。せまい床に机,いす、ベッドが住みつき、その上にこれまたよう分からないものと本棚に並んでいたのと同じような本がかららんになじむように置かれてる。ぺぺは流しでお茶の用意をしてそこらへんに腰かけといて、とこっちにふりむきもせずに言う。わたしはテーブルのまえにあるいすのかろうじて座れる部分に腰を下ろす。
 ペペはわたしのまえにあるテーブルに空いたすきまにお茶の入ったカップと少しのお菓子をおいてわたしにすすめると自分が執筆のために使っている机にあるいすに座りわたしのほうをむいてお茶をすする。
 いまは昔、竹取りのスイという娘山奥にひそむ。スイは狼に育てられ今年で二十歳になった。スイは里に下り自動販売機を求めて街をうろつく。二十歳になったスイはすぱすぱ吸い街のみんなは煙たがってスイに冷たい視線を浴びせる。そんな中ひとりの少年が蘭を一株スイにあげるとスイはそれを食べたがまだお腹がふくれなかったので少年を食べてしまった。子供の肉はぷりぷりしていてとても柔らかくておいしい。
わたしはカップの取っ手に手をかけてもう片方の手をカップの胴を包み込むように添える。手にお茶の熱によってカップが暖められているのが伝わる。カップの中をのぞき込むとそこには渋く濁ったお茶がゆたゆたとゆれてわずかにまわりのものを反射させながら、お茶特有な、でもどこかやっぱりちがう、鼻の上の部分を刺激する匂いがする。カップに唇をあてお茶を少し口に含ませると口いっぱいにお茶の熱、それからあのお茶特有な匂いとおもわず眉をひそめてしまうようないやな苦さが漂う。
「あの」
「今はちょうど祝祭でね、いろんなのがこの街に集まってくるんだよ。なにせ年に一度の祭りだからね、この日はわざわざ遠い地域からもたくさんのヒトたちがこの街に集まるんだよ。でもなかにはここにきてはいけないのもくるんだ。さっき君をおそったあの、マシュマロみたいな手長怪人?と言ったらいいのかな、まああの目が+みたいな怪獣、あれは母性と言って去年のユゴだったんだけどね、去年のアリスタが不幸な死に方をしてしまいそれ以来ああやって街を荒らすんだ。母性もそうなんだが、君もやっぱりここに来ちゃいけない人間なんだよ。君はもと在るべきところに帰るべきなんだと思う。けれど君がここに来たのには何か理由があるんだろう、だからここに来てしまった。その理由がなんなのかは当然ぼくには分からないがきみはなにをすべきかもう知っている筈だ。だからここに来た。そうだろ?」
 わたしはカップの熱を手で感じ取りながらぺぺの話を聞いていた。時折出されたお菓子のクッキーを食べたけど何故か味が全然しない。味がないかわりにクッキーのもそもそした感触が口の中にはっきりと記憶に残る。ぺぺの声は聞こえるのだけれどわたしはペペが一体何を話しているのかが全然あたまに入れることができなかった。それは言葉というよりも工事現場のような騒音としてBGMとして聞こえるみたい。
 ああ、お姉ちゃんそこで何しとん。あれ、声が出ない。出してるつもりなんだけどそれが音になることはなくただ無音なだけ。じりりりりりりりりりりり
 ペペの声もいつの間にか聞こえなくなっている。音という音はここにはもうない。けれどぺぺが何かしゃべっているのは分かるしわたしがなにかを言ってるのも分かる。外で鳥が鳴いているような音も聞こえる。それはまるで小説を読んでいるようなだった。
 それとは別にわたしを不快にさせる音が実際に空気をふるわせて伝わる音が鳴り響く。お姉ちゃんとわたしは草をいっぱい握りしめて一緒にお茶を飲んでてお姉ちゃんはわたしに何か言ってるんだけどやっぱり聞こえない。何かとても悲しいことを言ってたんだけどよく思い出せない。それはつらいものでなくて何かこう目の先がつんとするような切ないこと。
 目を覚ますとわたしの頭の上では目覚まし時計が景気よくならしていた。わたしはふとんから手を伸ばして乱暴に目覚まし時計を止める。まだねむいからふとんに潜り込んでたらお母さんが入ってきて「おきた?」って言ったから「おきた」ってわたしはふとんに包まりながら言ってそれからもそもそ服を着替えはじめる。
 夢の余韻がまだ残るけどその内容は紅茶に牛乳を入れて混ぜ合わさっていくスピードとさほど変わらないぐらいの速さでどんどん消えてなくなる。
 まだ目が半分くらいしか開かないまま洗面所で顔を洗った。冷たい水が蛇口から出てくるのを両手で大きな皿を作って受け止め、それを思い切り顔にぶつけると水の刺激が顔面の皮膚を通してあたまに伝わる。
 はあ、と胸の中にたまった息を吐き出して鏡を見てみると水にぬれたわたしの顔、それとあたまに赤いカチューシャがつけてあった。つけっぱなしで寝ちゃったんだろうか。なんで?頭から外して手に取ってみて見るとこれはお姉ちゃんがいつもつけてたやつなのがすぐに分かった。なんでお姉ちゃんのをわたしがつけてるんだろう。とか思いつつ部屋に戻るとその理由を何となく思い出したような気がした。
 部屋の中は特に変わった様子はなかった。さっきまでわたしがくるまっていたふとんが在り、机には読みかけのマンガが在り、その上にはランドセルがどんと置かれていた。そこには何のすきまも違和感もなくいつもと変わらないはずなのにどこかが抜けている。いつも見慣れている部屋の様子にわたしはなにかがぽっかり抜け落ちているようでむなしかった。でもどうしてそうなるのかはっきりと思い出せない、ぼやーっとあたまの中で杭のようなものが引っかっているような感じで、わたしは手にしたカチューシャのふちを指でなぞりながらそれを思い出そうとした。
 朝ご飯を食べて家を出て、集合場所の橋まで行くとまだあんまり他の子が来ていない中、さきちゃんがいつものように橋の下を流れる川をじっと見ている。
「さきちゃん、おはよ」
さきちゃんはわたしに気づいてなくてまだ川のほうをじっと見てる。
「おはよ」
「あっおはよ」
 三軒家の塀のうえでケンジとリョータがチャンバラみたいなことをしてる。ばか
 砂漠の中に街がある。
今度助けてくれた少年はシューという名前だった。姿はケンジそっくりだけど、この子はケンジとは関係がない。うしろにいるトリの頭をした子ドマと一緒にフーセンに乗って旅をしていると言ってた。
 わたしが砂に埋まっているところをたまたまシューたちが通りかかり拾ってくれたんだ。
 わたしは学校が終わるとすぐさま家に帰ってランドセルを放ってあの空き地を目指した。そして夕日が沈み辺りが暗くなる頃にまたカチューシャが光りだし辺りが光に囲まれ景色は歪む。わたしの体はふっと軽くなる。というよりもどこかに向かって落ちつづける。それは下に向かって落ちているんじゃなくて、いろんな方向に向かって落ちていっている。そして今度落ちた場所はこの砂漠だった。
 シューとドマはフーセンに乗ってこの辺りで郵送の仕事をしていて、今はその帰りだと言っていた。わたしは砂漠からどんどん離れて上空へ向かうフーセンに乗って辺りを見回す。辺りはほとんどが砂漠しか見えない。とおくに山が見える。山のてっぺんには雲がかかっている。シューが言うにはあの山のてっぺんはずっと雲っていて誰もあの山のむこうに行くことができないらしい。砂漠と山以外には大きな建物が見える。大きさはビルくらいで砂漠の真ん中にぽつんぽつんと立っている。柱みたいなのが砂漠に突き刺さってその周りに小さな小屋みたいのがたくさんくっついててさらにその周りにいろんな形のフーセンがくっついている。みんなそれを”街”と呼んでいる。
シューとドマは私を乗せて、街のひとつにフーセンを泊める。シューが慣れた手つきでフーセンを街につなぎ止めている様子はまるで漁師のおじさんが船を陸につなぎ止めているようさながら。わたしたちが降りたフーセンの両どなりにも同じようなのがいくつもあった。みんなシューたちの同業者なんだろうか
「むー。同業者もいるけどそうじゃないヒトもいるね。基本、何か運んでんだと思うけど」
「何かって何?」
「そりゃ何でも運んでるんだと思うよ」
「この街フーセンじゃないと来れないからね」
 大変そうだなぁ。よくわかんないけど。
 シューとドマはこれから砂ぼこりを落としに銭湯に行くそうで、私も砂まみれだったからついでに入らせてもらった。銭湯の中はどこでか見たような見たようなかんじだったけど、入ってるヒトたちは人じゃなかったり動物人間だったり液体みたいな人とかよくわかんなかった。風呂に入って砂を落とすとさっぱりした。着替えるときに服をはたいたら砂がめっちゃ出てきて着てもまだ砂のこってて動くたんびにジャリジャリして気持ち悪かった。銭湯から出ると今度はファミレスみたいなところでご飯をおごってもらった。ほんといたせりつくせりみたいで悪いなーって思った。
「むー。あんなところに人が落ちてるのってそうそうないからね面白かったよ。」
「そうそう」
 ふたりは街の案内もしてくれた。わたしたちは街のせまい路地を歩いていく。だいたいがその場しのぎで作られたような木の板の橋にこれまたとってつけたような手すりがついているだけで、その下を機械がせわしなく動いているかもしくは完全に沈黙している。路地といえるのか分からない。どちらかといえば作業用の通路だ。
 こっちの世界にある街はどこもごちゃごちゃと物がくっついている。まるでわたしたちの世界で捨てられたゴミが全部こっちに来てそれが寄せ集められてこんな街が作られているみたい。
 わたしたちはこの街にある市場や街の中心部にある街自体を支える動力部や砂漠が一望できる高台などを一通り巡っていった。
 
本田曹長の言葉にこんなのがあった
『運命というのは先に見るものではありません。後になって、振り返ってみるものです』

お父さんはよく、晩ご飯の後の食器を洗うとき「お母さんのためにしてあげるかな」って言うんだけど、ほんとうは自分が食器を洗いたいんだけど素直になれなくてそんなこと言ってしまうんだろうな。

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ひ口 なつ子
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1997/02/22
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